2020年12月8日~2020年12月10日にMoguraVR主催のXRカンファレンス「XR kaigi」が開催されました。XRに関心のある全ての開発者・クリエイターに向けたカンファレンスとしてオンラインで催された本イベントの1日目に参加した筆者の感想や内容をレポートします。
XR kaigiとは?
2020年12月8日~2020年12月10日に開催されたMoguraVR主催のXR開発者・クリエイター向けのカンファレンスです。
「XRを開発する全ての開発者・クリエイターのために」を開催理念に次のように挨拶しています。
XR Kaigiは、VR/AR/MRに関心のある全ての開発者・クリエイターに向けたカンファレンスです。
トレーニングや3Dデータ活用といった業務用アプリケーション、ゲームやライブイベントなどのエンターテイメントコンテンツまで、昨今のVR/AR/MRは幅広い分野で使われるようになりました。
XR Kaigiでは「つながり、共有し、高め合う」を目的として、XRというこの新たな領域に挑戦する開発者・クリエイター同士がコミュニケーションをとり、ノウハウを共有し、そして来るべき未来に向けてのモチベーションを業界全体で高めていくイベントを目指しています。
第1回のXR Kaigiは2019年12月に東京で開催し、総勢700名近い人数を動員、大盛況のうちに終了しました。第2回となるXR Kaigi 2020は、新型コロナウィルス感染症の状況を鑑み、オフラインでの開催計画を断念。完全オンラインでの開催といたします。
1日目の基調講演から始まり、3日間にわたるバーチャル空間上での展示、50以上のオンラインセッション、昨年はなかった新企画も予定しています。セッションでは国内外で実績のある開発者・クリエイターの皆さまから、XRの体験をデザイン・開発するための考え方、ノウハウをご講演いただきます。ライブでのQ&Aや、バーチャル展示場でのアバターを通じた交流といった、コンテンツも提供していく予定です。
XRに関わる全ての方に有意義な3日間となるよう、スポンサー企業様とともに事務局一同、鋭意準備を進めてまいります。乞うご期待ください。
XR kaigi 公式サイトより引用
本記事でXR kaigi 1日目に行われたセッションのレポートです。
「XR kagi」のオープニングセッションの記事を読みたい方はこちらのリンクからご覧いただけます。
【イベントレポート】XR kaigi 「XR作戦会議」に出席!
さらなる進化を続ける Mixed Reality の世界について
登壇者
- 上田 欣典(日本マイクロソフト株式会社 プロダクトマーケティングマネージャー)
- 鈴木 敦史(日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター テクニカルアーキテクト)
講演内容
マイクロソフトがHoloLens2という革新的なMRデバイス発売を開始してから一年が経ちました。本講演では最新の Mixed Reality テクノロジー市場の動向や、最新事例、最新のデモをご紹介いただきました。講演はYouTube配信となっており、こちらのリンクから本講演の全内容を見ることもできます。
XR Kaigi 2020 SPECIAL SESSION 「さらなる進化を続ける Mixed Reality の世界について」

MR領域は、ハードウェア、OS/クラウド、アプリケーション/コンテンツでの市場が急速に拡大しています。
日本における活用の一例としては自動車整備の働き方改革として、トヨタ自動車 GR Garage にHoloLens2が導入されました。
HoloLens2は精度の高さに音声認識と視線操作を組み合わせることができる高性能なデバイスであり、できることの可能性にいまだ底が見えません。講演内では相手側の視覚に情報を書き込める「リモートアシスト」などを紹介していただきました。他にも、Dynamics 365 MR アプリケーションといったクラウドテクノロジーとの連携によって広がった可能性も示しており、まだまだこれから活用の幅が広がりそうです。
XR Future Pitch 2020 ~未来を創るXRスタートアップによるピッチイベント~
登壇企業(登壇者)
- 株式会社Unscene (代表取締役 ビジャヤン・スワティナト)
- withID株式会社 (代表取締役 川 大揮)
- 株式会社Borderless– (代表取締役 大野 新)
- ラストマイルワークス株式会社 (代表取締役 小林 雄)
- イマクリエイト株式会社 (代表取締役 山本 彰洋)
コメンテーター
- 河合 将文(DBJキャピタル株式会社 投資部ディレクター)
- 若山 泰親(ブレイクポイント株式会社 代表取締役)
講演内容
XR技術を用いて未来を創るスタートアップ5社がそれぞれの技術や活用の事例を中心に紹介されました。
事例共有の多くはXR技術で可能性が広がる分野と言われているものであり、実際に講演を通じてその技術を見て私たちの理想がすぐそこまで来ているんだと改めて感じさせてくれました。
こちらの講演もYouTube配信となっており、こちらのリンクから本講演の全内容を見ることもできます。
XR Future Pitch 2020 ~未来を創るXRスタートアップによるピッチイベント~
講演の内容は以下の通りです。
- 「Unscene: 3Dプレゼン誰もが簡単に」株式会社Unscene
- 「バーチャルが作り出す、エンターテイメントの新たな可能性」withID株式会社
- 「人の感性を拡張する – AUGMENTED PRODUCT」株式会社Borderless
- 「仮想空間共有プラットフォームcomony」ラストマイルワークス株式会社
- 「習うより慣れる時代へ バーチャルトレーニング」イマクリエイト株式会社
大手コンテンツプロデューサーから見たXRへの期待と展望
登壇者
- 松山 周平(プログラマー・ヴィジュアルアーティスト / 株式会社ティーアンドエス 取締役 THINK AND SENSE部 部長 / クリエイティブレーベルnor所属)
- 佐々木 悠(株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 ゲーム事業本部 事業本部長)
- 久保田 瞬(Mogura VR 編集長・株式会社Mogura代表取締役社長)
講演の具体的な内容
XR技術はエンターテイメントにおいてはまだサブカルチャーとしての認識があります。これをメインカルチャーにするためにはどうコンテンツプロデュースをしていったらと良いかを議論されました。複数の質問に対して議論しながらそれぞれが答えていくという方式でセッションは進みました。

以下の内容はそれぞれの質問への回答を簡単にまとめたものです。
「大きなコンテンツを作ることとは?」
生活様式にどこまで溶け込み、手軽に楽しめるようになるか。ARフィルター(インスタグラムなど)やポケモンGOなどでARに関しては土壌が整ってきており理解されるのに時間はかからない。そして、日本はキャラクターを生み出すのが得意であり経済効果も高い。VRやARコンテンツはワンショットになりがちなため長期的に楽しんでもらえるコンテンツが必要。
「メインストリームのコンテンツプロデュースでメジャー感を出すというのは?」
どう口コミしてもらおうか。どう自慢してもらおうか。どこをスクショ撮ってもらおうか。などのユーザー側に立った時に自分はどうするか、どうしたくなるかを考える。
「XR体験コンテンツとして実現することと期待」
個人のレベルであれこれと作れるレベルになればいい。なので、個人で作るレベルをシンプルで簡単にして極端に下げなければいけない。そして、VRやARは道具であって、その新し道具によって新しい表現が生まれる。これからどのようなものが生み出されていくのかが楽しみ。
XR in 2020 and beyond / 2020年のXR市場そして今後の展望
登壇者
Tipatat Chennavasin(The Venture Reality Fundのゼネラルパートナー)
講演内容
VR界のオピニオンリーダーであるTipatat Chennavasin氏が2020年までのXR市場の変化に触れ今後の展望について話しました。
VRは2018年末に「Beat Saber」が成功を収め、2019年を変曲点として世界に普及していきました。PSVRは大型タイトルが出てこなかったためこれからはVRではなくPS本体が期待されます。OculusはQuestコンテンツが1年で40タイトルが500万ドル以上の収益で、Quest開発者の20%が100万ドル稼いでいるという状況が起きており、さらにはVRのトップタイトルは1億ドルを達成しています。そして、それらのゲームの大半は3人以下のチームで開発されており、これほど小さな予算・チームでこれだけの収益を得られることは滅多にないとのことでした。
また、新型コロナウイルスの影響で「あったらいいな」と思われていたものが「ないと困る」ものとなり、これからVR・ARがコロナ禍の新しい働き方を提示し生活に溶け込んでいくだろうとのことです。新型コロナ禍において、旅行に行く人の数は50%減少し、全労働者の30%が在宅勤務になっており、生活の転換が起きています。その中で一度溶け込んだ様式は元には戻らず、進化するでしょう。
最も強力なデバイスは手元で操作できるサイズのデバイスとし、さらなる普及に向けてはXR技術の小型化・軽量化がこれからのキーだとしています。さらに5Gとの融合で低遅延でさらに快適で使いやすいものになるだろうとのことです。
全体のセッションを通して
まず全セッションを通じて共通して登場したキーワードがありました。それはXR市場が日本に有利だということです。それは日本人が幼少期より漫画やアニメなどを通じて発想力やデザイン力というものが自然と鍛えられているからでしょう。現に来日する外国人の多くが日本のアニメなどのファンです。私たちは自分たちで思っているよりもそういったサブカルチャーに強い傾向があり、その強みはXR市場において強力です。ですが、現在のXR市場はまだ未知数なところがあります。そして、この現状は日本人のXR開発者が動き出すチャンスでもあります。Oculusのゲームコンテンツ開発者が普通では考えられないような利益をあげているという事実があり、チャレンジャーが増えることで日本人がXR市場に新たな革命を起こす日も遠くはなさそうです。